子宮腺筋症とは?
子宮筋腫は子宮の筋肉の一部がこぶのようになった腫瘤でしたが、子宮腺筋症は子宮の中にできる子宮内膜症です。子宮内膜症が筋層の中に入り込んで腫大したものです。子宮筋腫と同様、月経痛、過多月経、貧血症状、腹痛、腰痛、頻尿、便秘など様々な症状があらわれるようになります。月経のときには、内膜症組織が出血することになり強い痛みの原因になります。
診断
まず、患者さんから症状を詳しく伺い、触診、内診から子宮腺筋症の有無を推定します。さらに客観的な判定のためにエコー(超音波検査)、MRI、血液検査などを行います。
治療
子宮腺筋症の治療は、その状態(びまん性に子宮全体にあるか、子宮の一部にあるのか)、大きさ、症状、年齢、妊娠希望の有無などによって異なり、個々の患者さんにあわせて選択することになります。症状があまりない場合は、そのまま経過をみることもあります。ただし、小さくても出血が多かったり、月経痛や過多月経による貧血、筋腫が原因の不妊、大きくなった筋腫が他の臓器を圧迫して起こるさまざまな症状(腰痛、頻尿、便秘)がみられる場合には治療をする必要があります。不快な症状は治療により軽くしたり、なくすことが可能です。
手術について
子宮腺筋症の手術は一般的に子宮ごと取り除く子宮全摘術でしたが、最近では子宮腺筋症だけを取り除く子宮腺筋症核出術が行われるようになっています。。一般に妊娠を希望しない場合は子宮全摘術が選ばれ、妊娠を希望する方で腺筋症が子宮の一部に限局しているような場合には子宮腺筋症核出術も選択しの一つになりますが、最終的には患者さんの希望を十分考慮した上で決定されます。子宮を全摘した場合でも、通常卵巣が正常であれば両側とも残すため、術後の女性ホルモンの分泌には変化はありません。
子宮腺筋症には子宮内膜症、子宮筋腫が合併するケースが多く、保存手術の難易度は高くなりまが、最近では多くのケースで腹腔鏡下手術が行われるようになっています。(腹腔鏡下子宮腺筋症核出術、腹腔鏡下子宮全摘術)
腹腔鏡下子宮腺筋症核出術(Laparoscopic adenomyomectomy)
子宮腺筋症が子宮の一部に限局している場合には子宮筋腫を核出するときと同様に子宮から腺筋症を核出して子宮を修復する手術が行われます。子宮腺筋症を核出するということは、腺筋症が浸潤した子宮筋層まで切除してしまうことになるので、子宮の縫合修復は子宮筋腫核出術のときより難しくなります。これらを全部腹腔鏡で行うのが腹腔鏡下子宮腺筋症核出術です。子宮内膜症、子宮筋腫が合併することが多いので手術時間はかなり長くなることが多くなります。
この手術のメリットは子宮が外にさらされず傷がつきにくいので癒着が少ない、切開が小さい(1cm前後の傷が4つ)ので術後の回復が早い、痛みが少ないことなどです。デメリットは、手術操作が複雑で難しいので、症例によっては時間が長くかかる、きちんと修復しておかないと将来の妊娠出産の際に子宮が破裂することがありうることなどが挙げられます。
腹腔鏡下子宮全摘術(Laparoscopic hysterectomy)
腹腔鏡下で開腹手術と同じように手術操作を行い、子宮に入る血管、靱帯などを処理していき、子宮を摘出します。その後、膣管を縫合閉鎖し止血を確認すれば手術は終了です。子宮の回収は膣から、もしくはモルセレーターを使用して分割しながら腹壁の小切開孔から回収します。子宮の回収以外のすべての操作を腹腔鏡で行うのを“全腹腔鏡下子宮全摘術”(Total laparoscopic hysterectomy)といい、熟練した術者が行えば、出血も少なく安全で術後の痛みも少ない手術が可能になります。
薬物療法について
子宮腺筋症は卵巣から分泌されるホルモンの働きにより大きくなります。そこで薬によってホルモン分泌を一時的に抑えて筋腫を小さくするのが薬物療法です。これ(GnRHアナログ)を使用すると月経が止まり一時的に閉経に近い状態になり筋腫は小さくなり貧血などの症状も改善します。手術前に病変部を縮小させ手術時の出血量を減少させて手術を容易にする目的で使われたり、閉経が近い患者さんではこの薬を続けて閉経に至らせることにより手術を避けることもあります。一般的に、投薬を中止すると子宮の大きさや症状は数ヶ月でもとに戻ってしまいます。