腹腔鏡下手術スーパーテクニック第7回 【婦人科における結紮縫合】
★腹腔鏡下手術での結紮縫合
腹腔鏡下手術でテレビモニターを見ながら結紮するのは一見相当難しく思えますが、鉗子操作のテクニックを覚えればそれほど難しいものではありません。ここでは結紮縫合についてのお話をしていきたいと思います。
★婦人科腹腔鏡下手術における結紮縫合
婦人科手術において、結紮縫合をするのは以下の場面です。
・出血点の止血
・卵巣の縫合(卵巣嚢腫核出術)
・血管の結紮(子宮動脈、基靭帯、子宮上部靱帯、卵巣動静脈など)
・膣断端の縫合(子宮全摘術のとき)
・子宮筋層の縫合(子宮筋腫核出術のとき)
かなり高度なテクニックですが、以下もありえます。
・腸管の縫合、修復(直腸子宮内膜症切除)
・膀胱、尿管、卵管の縫合
★腹腔鏡下手術で結紮縫合は必要なのか?
実は多くの術者が十分な結紮縫合のテクニックを持たないまま腹腔鏡下手術をしています。というのは、結紮縫合ができなくても手術ができてしまうからです。たとえば、血管の血流を遮断するのにはクリップを使えばいいのです。また、止血でもバイポーラなどで電気乾燥するか、クリップを使えばどうにか上手くいくこともあります。
その上、子宮全摘後の腟断端は、経膣的に縫えばどうにかなるでしょうし、卵巣や子宮を縫合する場合には、2-5cm程度の小開腹を加えて開腹手術と同様に経腹的に縫うこともできます。(4-5cm切って、なんで腹腔鏡下手術?まあ、それはいいとして。)つまり、体腔内での結紮縫合ができなくても、どうにかやっていけるのです。
しかし、それでいいのか?小開腹を加えてわざわざ数センチの狭いところから縫えばどこかで無理が来てしまうことがあります。粗暴な操作をして術後癒着が生じやすくなるかもしれません。経膣的に縫おうとしても術野が狭ければ膀胱や尿管を引っかけたり、かえって時間がかかったりするかもしれません。
もし、突然、強出血があったら・・・結紮できれば、どうということはなくリカバリーできるかもしれませんが、結紮縫合ができないのなら開腹手術に変更しなければならなかったり、クリップやバイポーラで無理に止血したりすることになります。(無理な止血操作は術後合併症に直結!)
どう考えても、腹腔鏡下での結紮縫合は必要です。より高度な手術をするためにも、安心して夜眠るためにも是非このテクニックを習得しましょう。
★糸結びの用語
1.Half knot(1回結び)
2.Double half knot(2度捻った1回結び)
3.Square knot(男結び、こま結び、本結び)
4.Granny knot(女結び、縦結び)
5.Surgeon’s knot(外科結紮:1回目がDouble half knot、
2回目と3回目がSquare knotとなる3回結び)
★縫合の用語
1.Tail(ショートテールと呼ばれることが多い)
2.Entry point(刺入点)
3.Exit point(導出点)
4.Bight(ループ、ロングテールと呼ばれることが多い)
5.Holding point(把持部:H-pointと呼ばれることもある)
6.Standing point(立脚部)
★技術の用語
1.Loop(糸を屈曲させた部分)
2.C-loop(C字状の屈曲)
3.Reversed C-loop(逆C字状の屈曲)
4.Overwrap(上から巻く)
5.Underwrap(下から巻く)
6.Square slip knot(滑らせることのできる男結び)
7.Locking square knot(締まる男結び)
★結紮を作る二つの方法
・体外結紮—体腔外で結び目を作り、それを鉗子(ノットブッシャー)で押し
込んで結紮を作るテクニック
・体内結紮—体腔内で鉗子を使用して糸結びをするテクニック