腹腔鏡下手術スーパーテクニック第3回 【hand-eye coordination】
hand-eye coordinationとは、すなわち、手と目の協調のことです。腹腔内の状態を目で認識し、それに対して的確に手術操作を加えるということです。腹腔鏡では立体感がなく、アクセスの制限があるために思った通りにはできません。
では、モニターを見ながら、あたかも実際に臓器を見ながらしているかのように手術できるようになるためにはどうすればいいのでしょうか?
★1. 腹腔内所見の確認
まず腹腔鏡を挿入し気腹を開始(もしくは腹壁を吊り上げ)します。次に術者が行うのは腹腔内所見の確認です。術者や助手は鉗子で子宮や卵巣、卵管を持ち上げたりして腹腔内を観察します。
これは、次の手術操作を行うための準備運動になります。つまり、鉗子で臓器を触ることにより臓器の位置関係、動きやすさ、固さ、アプローチしにくいところを大脳にインプットし、頭の中で立体感、アクセスの方法をプログラミングしているのです。
★2. 臓器の近くのほうが立体感が出る。
直接、切開や剥離、凝固などの手術操作をする際には目的とする臓器に触れます。その周辺をしばらく触っていると、ある程度の立体感を感じやすくなります。結紮縫合の場合には臓器から離れて宙で操作してしまうことになりがちです。そうすると立体感が感じられなくなってしまいます。そういうときでも結紮縫合部位や臓器の近くで操作すると立体感が出てくるようになります。
★3. 一度、触ってから操作
たとえばハサミ鉗子をそのまま近づけ糸を切ろうとした場合、糸ではなくて近くの組織を傷つけることはありえます。このときにハサミを閉じたまま近づけて、一度糸にタッチしてから切れば、ハサミと糸の位置関係がわかるようになり安全です。また、非常に細かい操作をするときには、同様に一度タッチすることで位置関係を理解して立体感を出すことができるようになります。
★完成度の高いhand-eye coordinationのために
1. 鉗子、持針器等に慣れる:不必要なところで神経を使わないために鉗子、持針器、その他操作する器具を自分の手と一体化するまで慣れておくことが望ましいと思います。
2. ブラックボックスやダンボールボックスでのトレーニング:継続して練習すれば必ず上手くなります。いろいろな方向からアプローチする、片目をつぶって立体感がない状況にしてみる、ビデオカメラを取り付けてテレビに映して練習するなどいろんな練習法を試みてください。
3. 結紮縫合の練習をする。
糸結びの時の鉗子の動きは非常に複雑です。結紮縫合が難しいのはアクセスの制限があるためです。まずは、結紮縫合が十分できるほどに練習しておくと、実際のオペ中にはhand-eye coordinationをよくすることに集中することができます。
結局、hand-eye coordinationとは、視野の制限や立体感のなさ、アクセスの制限をいかに解決するかということになってきます。