腹腔鏡下手術スーパーテクニック第4回 【術野の展開】
婦人科の開腹手術の場合、腸管がじゃまになります。柄付きガーゼを入れて腸管を上腹部へ圧排します。また、他の臓器が手術操作の障害になる場合、様々な鈎で圧排しながら十分なスペースを作って手術操作をすすめることになります。腹腔鏡でも同様に大きなスペースを作らなければ安全でスムーズな手術はできません。開腹であれ腹腔鏡であれ上手な術者は限られた空間に非常に大きなスペースを作ることができるのです。
【子宮の展開】
子宮が大きい場合には子宮自体がじゃまになってしまいます。子宮を動かしてスペースを作らないといけないのですが、経膣的に操作用の器具を子宮に挿入して操作するか、腹腔鏡で助手に子宮を圧排してもらうことになります。
★子宮操作用の鉗子(子宮マニピュレーター)
1.ユテリンマニピュレーター(エチコンエンドサージェリー)
2.RUMI、Kohコルポトマイザーシステム(Cooper surgical co.)
3.ペロシ・ウテリンマニピュレーター(Apple Medical)
4.ウテリンマニピュレーターCLERMOND-FERRAND(KarlStorz)
これら(1.2.3.)のマニピュレーターは膣から子宮内腔へ挿入した部分を前後屈させることができるので膀胱子宮窩やダグラス窩にスペースを作ることができます。
【卵巣の展開】
卵巣がじゃまになることはあまりないかもしれませんが、ダグラス窩、左右卵巣窩に対して手術操作をしたいときには卵巣を展開してスペースを作ることが必要になります。
★鉗子で圧排するー助手に押さえてもらうことが多いのですが、慣れた助手でなければ十分なスペースを作るのは難しいことが多い。
★糸で吊り上げるー助手を使う必要がないので助手の鉗子は他の操作ができます。
【膣周囲の展開】
膣周囲に手術操作をするのは、後膣円蓋を切開して経膣的に腫瘤を回収するときや全腹腔鏡下子宮全摘術で膣管を切開するときがあります。脱気を防ぎ、腹腔鏡下に膣管と子宮の境界を知ることができます。
★Kohコルポトマイザーシステム
(http://www.endosurgery.jp/tlh1/を参照)
★膣パイプ(近日、ホームページ上でアップします。)
【圧排用の鉗子】
圧排用の鉗子にはさまざまな製品がありますが通常の把持鉗子でほとんどの場合十分対応できます。この際、助手が把持鉗子で圧排したり組織を押さえたりすることになります。鉗子にはメリーランド鉗子のように先端が細くなったようなものより、先端が平べったかったり他臓器に傷をつけにくいものを選びましょう。腸鉗子のようなものがいいでしょう。
圧排用の鉗子には、くま手のように開閉するものやヘビのようにぐにゃっと曲げて使うことができるようなものがあります。効果的に使えば大きなスペースを作ることができます。
【助手の鉗子の使用法】
鉗子は開閉して臓器を把持することができますがそうするのではなく、まず第一に鉗子を閉じたまま、臓器を持ち上げたり圧排させることを覚えさせます。大抵の場合、このほうが上手くスペースを作ることが出来ますし早くて確実です。
次に鉗子を若干開いて(把持せず)圧排することを覚えさせます。最後に臓器を把持することを覚えさせます。把持するのは卵巣嚢腫の核出時、筋腫の核出時、糸を把持するときくらいでいいのです。
【S状結腸の生理的癒着を剥離】
S状結腸、直腸が垂れ下がってきてどうしてもじゃまになってしますことがあります。とくに子宮内膜症手術ではダグラス窩、骨盤側壁の操作をする際に、S状結腸がすぐ近くにあって操作しずらいことがよくあります。
この時には、S状結腸と骨盤左壁の生理的な癒着を剥離することでS状結腸が上方へ移動して手術操作をしやすくなります。
【トロッカーの位置の決め方】
快適な手術操作のためにはトロッカーの位置決めが大切です。TLHの術者は子宮頚部、膣管周囲の操作を重要視するためにやや下にトロッカーを入れる傾向があります。また、LAVHの術者は腹腔鏡下では子宮上部靱帯を切断するだけですから、やや上にトロッカーを挿入します。このように手術操作部位によりトロッカーの位置はすこしずつ変わってきます。